絶対君主

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 額に触れる冷んやりとした感触にふと目を開けると、 「起こしちゃった?」  葵咲(きさき)ちゃんが僕の顔を覗き込んでいた。  冷たく感じたのは頭に載せられた氷のうだったみたいで。 「頭、少し起こせる?」  聞かれてぼんやりした頭で「えっと……」と考える。  促されるままに頭を上げたら、枕の上にひんやりとした氷枕が置かれたみたい。  どうやら氷と水を袋の中に封入するタイプの氷枕らしく、頭を動かすと水の中に漂う、氷のカラカラという涼しげな音が聞こえた。  氷枕なんてうちにあったっけ。  いや、そもそも氷のうもないはずだ。  そこまで考えてやっと――。 「葵、咲ちゃん!? 大学は……」  僕の頭は葵咲ちゃんが寝室にいるという由々しき事態に気がついた。 「理人(りひと)からのメッセ見て、途中で慌てて抜けてきちゃった」  ペロッと舌を出されて、僕は溜め息をつく。 「メッ、セージ見た、なら……僕、実家に……戻ってって」  書いてたよね?って言おうとしたら、言葉半ばで葵咲ちゃんの華奢な指先に唇を押さえられて封じられてしまう。 「そんな身勝手な指示、聞く気ありません」  ムッと怒ったような顔で睨みつけられて、僕は一瞬ひるみそうになった。  僕のフィアンセは、怒った顔も本当に可愛くてこんな時なのに見惚れてしまいそうになって困る。
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