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「身勝手って……もしキミにうつ、ったりした、ら」
マスクをしていないことに気付いて、慌てて布団に潜り込んで枯れた喉でモゴモゴと言い募ったら、「その時は理人が看病してくれるでしょ?」とか。
そりゃあもちろん、葵咲ちゃんがしんどい時は全力でサポートするけど!
そんなことになって欲しくないから実家に戻って欲しいわけで。
「葵咲……」
氷のうを頭から下ろして身体を起こすと、関節がひどく軋んだ。
でもそんなの今はどうでもいい。
「僕の言うことが……聞けないの?」
声を低めて彼女を睨んだつもりなんだけど、熱に潤んだ目と、喉をやられて掠れた声では効果が薄かったのか、ふいっと視線を逸らされた。
「――聞けない」
ややして、ポツンと落とされた言葉に、僕は瞳を見開いた。
葵咲ちゃん、今なんて……。
言われた言葉が信じられなくて彼女を無言で見つめたら
「聞こえなかった? 聞けないって言ったの!」
今度こそハッキリと、怒った声でそう告げられた。
「でも……葵咲ちゃん……」
途端、彼女のアーモンドアイに気圧されてひるみそうになるとか。頑張れ、僕!
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