絶対君主

3/8

51人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
「身勝手って……もしキミにうつ、ったりした、ら」  マスクをしていないことに気付いて、慌てて布団に潜り込んで枯れた喉でモゴモゴと言い募ったら、「その時は理人(りひと)が看病してくれるでしょ?」とか。  そりゃあもちろん、葵咲(きさき)ちゃんがしんどい時は全力でサポートするけど!  そんなことになって欲しくないから実家に戻って欲しいわけで。 「葵咲……」  氷のうを頭から下ろして身体を起こすと、関節がひどく軋んだ。  でもそんなの今はどうでもいい。 「僕の言うことが……聞けないの?」  声を低めて彼女を睨んだつもりなんだけど、熱に潤んだ目と、喉をやられて掠れた声では効果が薄かったのか、ふいっと視線を逸らされた。 「――聞けない」  ややして、ポツンと落とされた言葉に、僕は瞳を見開いた。  葵咲ちゃん、今なんて……。  言われた言葉が信じられなくて彼女を無言で見つめたら 「聞こえなかった? 聞けないって言ったの!」  今度こそハッキリと、怒った声でそう告げられた。 「でも……葵咲ちゃん……」  途端、彼女のアーモンドアイに気圧(けお)されてひるみそうになるとか。頑張れ、僕!
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加