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「――あの、マ、スク……」
そう結論に達した僕は、小さく吐息を落とすと、せめてお互いにマスクぐらいは、と折衷案を提示してしまった。
結局、僕は元気でも病気でも葵咲ちゃんには敵わないんだ。
「いい子」
途端、頭を撫でられて、複雑な気分。
葵咲ちゃんはニコッと笑ってポケットから取り出したマスクをすると、「理人はマスクする前に着替えね」ってウインクするんだ。
ちょっと、なんで今、そんな可愛いことしてくるの?
抱きしめられないのが、すごくもどかしいじゃないか!
***
葵咲ちゃんは、僕のタンスから寝巻きにしているスウェットの上下と下着一式を持ってきてくれると、それらをベッドに置きながら心配そうに聞いてくる。
「ひとりで着替えられそう?」
見たら、気丈に振る舞っているけれど、顔が真っ赤で。
僕が着替えられないって言ったら、下着も替えてくれる覚悟があるんだろうか?
ふとそんなことを思って、いや、でもそれ、僕が恥ずかしいや!と却下する。
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