絶対君主

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「大丈、夫」  言ったら、「しんどそうだから。えっと、う、上だけ! 上だけ着替えさせてあげるね」って、葵咲(きさき)ちゃんが僕のシャツのボタンと緩んだネクタイに手を掛けるんだ。  強気な言葉とは裏腹、彼女がめちゃくちゃ緊張しているのが、指の動きのぎこちなさで分かる。可愛いな、葵咲ちゃん。  どんなにしんどくても、僕は葵咲ちゃんを見ていると辛さがふと(やわ)らぐんだ。  僕にとって、葵咲ちゃんこそが最高の癒し(くすり)なのだと再認識させられる。  耳まで真っ赤にして、緩めたネクタイを首から外して、シャツのボタンも全開してくれた葵咲ちゃんが、腕から袖を抜き取ってくれる。 「理人(りひと)……。ば、万歳……?」  照れたように小声で指示を出して、そっぽを向いて僕のタンクトップを脱がせてくれてから、これまた視線をそらせたまま、新しいのを着せてくれた。  僕に下着を着せてやっとこっちを見るとか、キミはどんだけ初心(うぶ)なの。  一緒にお風呂に入ったことだってあるし、僕の上半身(半裸)なんて――何なら全裸だって――見慣れてるはずなのにね。  初々しい反応をする葵咲ちゃんが可愛くて、回復したら、たくさんたくさんキスしよう、って気力が湧いてくる。
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