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「ごめんね、葵咲。連絡、くれ、てたの……寝入、ってて今、気付いた、んだ」
言うと、『うん。えっと、あのっ……ごめんなさいっ! 実は心配で……さっきあなたの様子、見に行っちゃったから……理人がぐっすり眠ってたの、知ってる……の』とか。
『あ、でもお願いっ! 実家には電話しないでっ』と慌てたように言って、『理人と……離れたく、ないの』と小声で付け加える葵咲ちゃんに、僕は「しないよ」と即答した。
「僕のほ、うこそ……電話、反応し、なくて……心、配かけ、てごめんね。あと……薬、あ、りがと。正直、すご、く助かっ、た」
言ったら、『……うん』って泣きそうな声が返る。
「……葵咲っ?」
その気配に慌ててベッドから飛び起きて扉に手をかけ……たところで、僕はグッとこらえてその場に踏みとどまった。
扉1枚挟んだ向こう側から葵咲ちゃんの気配がする。
『理人、大好き……』
電話からと扉越しに、葵咲ちゃんの声が聞こえてくる。
『だから……早く元気になって? 離れ離れは寂しいよ』
日頃なら絶対に言わないような甘えた言葉が思わず漏れてしまうほどに、葵咲ちゃんは僕を求めてくれている。
「僕も……葵咲ちゃ、んが大、好きだよ」
そっと扉を撫でると、感じるはずもないのに彼女の温もりが伝わってくる気がして。
葵咲ちゃんの寂しそうな顔が思い浮かんで、鼻の奥がツンとする。
一刻も早く体調を戻して、葵咲ちゃんを思い切り抱きしめたい。
――僕も、離れ離れは嫌だ。
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