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「鞄?」
聞き返すと葵咲ちゃんが小さくうなずくから、僕は洋間に置き去りになっている彼女の鞄を持って戻ってくる。
「なか、にね……診、断書」
言われて、「開けていい?」と聞くと「ん……」と返事があって。僕は彼女に見える位置に移動して鞄を開ける。
と、中に薄青色の封筒が見えた。
これ、見覚えがある。鳥飼小児科医院のだ。
封筒の下部に住所などが印字されたそれを開けると、中に僕がもらったのと同じ診断書が入っていた。
そこにはしっかり「インフルエンザA型」と書かれていて。
鳥飼奏芽が僕の知らないところで僕の葵咲ちゃんに触れたのかと思うと言いようのないモヤモヤが募って。
「院、長……センセ」
僕の表情を見て思うところがあったんだろう。
葵咲ちゃんが身体を起こそうとして……。僕は慌てて彼女を押しとどめる。
「なま、え……見て?」
それでもそれだけは伝えないと、って感じで葵咲ちゃんが僕の手をギュッと握るんだ。
僕は手にした診断書にもう一度視線を落とした。
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