だから言ったのに

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 え?  葵咲(きさき)ちゃんの言葉に僕は思わず彼女の顔を見つめる。 「うつって良かったとか……」  何バカなことを――。そう続けようとしたら、葵咲ちゃんが僕に淡く微笑みかけるんだ。 「葵咲?」  その笑顔はしんどそうなのにどこか本当に嬉しそうで――。  僕は思わず彼女の表情に見入ってしまう。 「だって、ほら……わた、しも同じ病気なら、気兼、ねなく……一、緒にいられ、るでしょ?」  僕は葵咲ちゃんのその言葉に思わず彼女を抱きしめていた。 「りひ、と?」  耳元でつぶやかれる葵咲ちゃんの吐息はとても熱くてしんどそうで。  なのに、この上なく甘美に響くんだ。 「葵咲ちゃんはホント、バカだな」  そんな彼女に眉根を寄せて微笑みかけたら、「ね、理人……キス、して?」とか。  僕が病気になってからは、葵咲ちゃんにうつしたくなくて、(かたく)なに彼女のことを避けてきた。  キスだって冗談抜きに丸4日はしていない。だから、正直葵咲ちゃんからのおねだりを、僕は飛び上がりそうになるくらい喜んだ。  それでも葵咲ちゃんの体調を(おもんばか)って、精一杯我慢して軽く唇が触れるだけのキスを落とすに留めたら、葵咲ちゃんが僕の服の胸元を引っ張って、「そ、んなんじゃ、足、りな……い」って言うんだ。  マジか!
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