手紙

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手紙

拝啓 日引様  厳しい冬が終わり、そろそろ桜の芽が膨らみ始めた頃となりました。気温の変化が激しい中お風邪などひいておられないでしょうか。 暫くご無沙汰ばかりしていた私が突然のお手紙失礼いたします。 あの時以来ですものね。 あの時の私はまだ幼く、命の恩人の日引さんの連絡先を聞き書き留めておくなどと言う知恵を持たず、こうして連絡できたことは幸運・・もしくは引き寄せられているのかと感じています。 私ももう三十八歳になり、夫、子供と三人小さいながらも家を建て幸せに暮らしています。 しかし、ある手紙が私の元へ送られてきました。その手紙の内容を読むと不思議なことが書かれています。私宛に届いた手紙なので自分でどうにかしようとも考えましたが不安が先に立ち筆を取った次第です。 不躾なお願いだとは承知していますが、一度お会いできないでしょうか。                      後藤 美佐子                       (旧姓 勅使河原 美佐子)                              敬具
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