美佐子との出会い

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ブランコに乗っていた女の子が立ち上がり、ゆっくりとベンチに座る日引の前に歩み寄って来たのだ。 目の前に立つ女の子は、大きな瞳で遠慮がちに日引を見やると 「おばさん。私とお話ししてくれる?」 おかっぱの頭を少し傾げてそう言った。 日引はその愛くるしい仕草を見ながら(ほっといてはくれないようだね)と諦め 「いいよ。何をお話ししようかね」 と、笑いかけ自分の隣に座るよう手でベンチを軽く叩く。 女の子は嬉しそうに笑うと日引の隣に座り、足をぶらぶらとさせ何を話そうか考えている様子だった。 「おばさんはいつもこの公園に来るけど一人なの?」 「そうさ」 「じゃあ、私と同じだね。私も独りなんだ」 「そうかい。お母さんとお父さんはどうしたんだい?心配しないかい?」 少し暗くなってきた空を見ながら日引は言った。すると、女の子は俯き寂しそうにしながら 「・・・いないよ。お母さんもお父さんもいない。友達もいないんだ」 「・・そうかい。じゃあ、私があんたの友達第一号になってあげようかね」 「え?本当⁉」 パァっと明るい笑顔に変わった女の子は大きな目を日引に向けた。 「本当さ、じゃあまず自己紹介から始めようか。私は日引って言うんだ。ここから歩いて五分の所にあるアパートに住んでるんだよ。隣に良く吠える犬を飼っている家があるからすぐに分かるよ。そこで一人で住んでるんだ」 「あ、知ってる!学校に行く時いつも通るんだけどよく吠えるんだよね。あの犬。じゃあ今度は私の番。私、勅使河原美佐子って言うの。小学二年生。住んでる所は・・」 美佐子は日引から視線をずらし言い淀んだ。 「仲間の樹・・かな?」 「何で知ってるの⁉」 目を丸くして日引を見る。 「何となくね」 仲間の樹とは、近所にある施設で両親がいない子供達が共同で生活をしている。確か、中学校を卒業するまでの期間だけで、その後は出て行かなくてはいけないと聞いた事がある。
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