住んでみた。

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ

住んでみた。

引っ越して荷物をある程度整えてから。 俺は近くのスーパーに買い物に行った。 少しづつ必要なものから買い足しているところ。 コップと皿はもう十分だし、調理器具も大丈夫。 調味料はまだ足りないのはソースかな? スマホの買い物メモを見ながらスーパー内を散歩。 納豆や豆腐がある棚に近づいたときに、急にスマホが暗くなった。 (あれ、触ってなかったから消灯した?) 電源ボタンを押しても、画面は暗いまま。代わりに頭に声が響いた。 『キャベツ!キャベツ!』 『いやココはリンゴだろ!』 『サツマイモがいいな~。』 (何の声?いや、気のせいだよな?) もう一度スマホの電源ボタンを押すと、スマホの画面が表示された。 あの声は何だったんだろう……。気になりはしたが、気にしないことにした。 「今日は何食べようかな……。野菜炒めとか作ろうかな。」 買い物かごにキャベツを入れて、会計レジに並んだ。 自宅に帰り、冷蔵庫に買ったものをしまう。 夕食も食べ、ベッドに横になり、目を瞑ると急に声が聞こえる。 『やったぁキャベツじゃん!俺の勝ち!』 『今回は勝っただけだろう。』 『いやいや、サツマイモだって昨日買ってたじゃん。』 また声が聞こえる。何なんだ?薄っすら目を開けると、天井に何かが見えた。 そこには3匹のイヌのようなもの。 「イヌ……?」 『あ、やばい。俺らが()えたみたい。』 『もうバラしても良いんじゃないか?』 『え~、もうちょっと黙っておきたかった。』 そのイヌたちは、俺の目の前まで空中を駆けてくる。 『俺は、銭助(せんすけ)』 『ワシは、鼓一郎(こいちろう)』 『私は、(おうぎ)』 『俺らは、この建物に住んでる、カミサマ。』 『信じるかどうかは任せるが、事実は事実。』 『私は別にどっちでもいいけど。あ、お供え物は大歓迎。  どうせならサツマイモがいいな。』 わいわい喋りかけてくる3匹のイヌたち。 「待って、嘘だろ。イヌが?」 『どうやらキミには僕らの姿がイヌに()えてるみたいだね。』 『こないだの奴は、ワシらを見てキツネとか言ってたな。』 『お化けとか、タヌキと言われた事もあったわね。失礼しちゃうわ。』 「えーと、カミサマ?幽霊(ゆうれい)とかじゃなく?」 『事実だよ。俺らはカミサマ。』 『厳密には、ちょっと違うところはあるがな。』 『面倒だからカミサマでいいじゃない。私はそう呼ばれる方が好きよ。』 「何でこの部屋に居る?」 『俺らが一番、居心地のいい部屋だから。』 『ちょっと考えたら当然だと思うが。』 『日当たり良好、土地のエネルギーの集合地。サイコーじゃない?』 「……じゃ、もういいや。俺に何か関係ある事は?」 『俺らにあんまり驚かないんだね。キミに対しては、"今は特に無い"よ。』 『強いて言えば、住んでいる者しかワシらが()えない事くらいか?』 『前に住んでても、この部屋から縁が切れると視えなくなるのよね~。』 何かもう、超常現象過ぎて諦めた。空中を飛ぶ3匹のイヌたちが居て。 ある意味同居みたいな状態になってる部屋らしい。そりゃ皆、契約解除したりするわ。 特に影響無いとか言ってたし、とりあえずは良いか。 「俺に対して何も影響無いなら、もういいや。よろしく。」 『うん、よろしくね。俺らは何も食べなくても大丈夫だから。』 『土地のエネルギーで十分に満腹だしな。』 『私は、サツマイモのお供えがあると嬉しいかな。切りたてのやつ。』 ……この部屋には、イヌのカミサマ?が住んでたようだ。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!