容疑者5 夫 中尾隆司

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容疑者5 夫 中尾隆司

 広瀬は、目の前で悩んでいる中尾に厳しい質問を投げかけた。 「中尾さん。僕に隠していることがありますね? そろそろ正直に話して貰えませんか?」 「え?」  広瀬の言葉に、中尾はキョトンとした。 「全て話しました。そうじゃないって言うんですか?」 「そうです。ああー、隠すつもりはあなたになかったかもしれませんね。私の質問の仕方が悪かった。奥さんとの本当の仲についてまだ聞いていなかった。実際、どうだったんですか?」  広瀬が笑顔を作った。それが却って恐怖を与えた。 「それは、どういう意味です?」  中尾はずっと妻への愛を表明していた。それを疑う広瀬を、真琴と満里奈が不安そうに見守る。 「もし、ご自分の身の潔白を証明したいなら、噓を吐くとか誤魔化そうとしてはいけません。本当のことを話してください。奥さんと喧嘩していませんでしたか?」 「喧嘩なんて……」  みるみるうちに真っ赤になり、玉のような汗が顔中から吹き出して、しどろもどろになった。  誰がどう見ても、何かを隠している反応だ。 「中尾さん、どうなんです?」  広瀬が中尾を見据えた。  急に中尾を追い詰めだした広瀬を見て、満里奈と真琴がさらに衝撃を受けた。 「え? え?」 「どういうことですか?」 「夫が犯人だったってオチ?」 「ち、違う! 私は犯人じゃない! 依頼人に対して、とんでもない侮辱だ! この、ヘボ探偵!」  中尾は、興奮して広瀬を罵りだした。  広瀬は悠然と構えている。  それがこの男の本性かと、満里奈と真琴は驚き震えた。
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