暗殺ノ章

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「どうして・・・? どうしてえええええ!」 両親だったその肉塊にフレデリカは走り寄って縋り付く。 大きな声で泣き叫び、大粒の涙をぼろぼろとこぼした。 その涙すら拭ってくれる人はもういない。 真っ赤な炎が客間を囲むようにして燃え上がる。 バチバチと家の材木を燃やす音がする。 「お前、生きたい?」 黒く長いストレートの髪をした黒服の女性はフレデリカに訊ねる。 「いや・・・いやぁぁあ! パパもママもいない世界なんていやぁぁああ!」 フレデリカは泣き叫ぶ。 今までにないほどの大きな声で両親だった体(モノ)を両手で抱きしめて。 「なら、ここで二人と一緒に死ぬかい?」 「それも・・・いやだ。」 黒髪の女性の言葉に対して、フレデリカは首を横に振る。 「今日この村にいた・・・それがあんたの運命さね。 私らは雇われの身だ。 この村長が何かとんでもないお宝を持ってたみたいでね。 村の奴らもそれを秘密にしてたみたいなんだ。 無関係なあんたたちを巻き込んで悪いとは思うが・・・いや、わざと巻き込ませたのか? ふふ、これもまたさだめかねぇ。」 黒髪の女性はそういうと母親だった肉体に突き立てられた剣を抜き、鞘に収める。 この女性は双剣使いのようだ。 「パパとママを・・・返して!」 フレデリカはそういうと黒髪の女性に飛び付きスカートの裾を握りしめる。 「それはできないよ。 でもあんたを生かすことはできる・・・条件付きだがね。 ただそれさえ満たせば・・・いつかこの仕事の依頼主を殺せるかもしれない。 パパとママの仇を取ることはできるよ。 どうするね?」 黒髪の女性はしゃがんでフレデリカと目線を合わせる。 真っ黒な布を目隠しにしており、顔には赤い血がベッタリと付いている。 「仇を・・・取る。」 「そうかい・・・。 ならついておいで。」 黒髪の女性は優しい手つきでフレデリカの頭を撫で、手を取って村から去っていった。
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