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その夜の私は、慣れないお酒をたらふく呑んでしまっていたから、記憶の正しさを保証する自信はない。だから、酔っぱらいの話を聞く程度のつもりでいて欲しい。ただ一つ確かなことは、あの夜のお酒は大変美味だったということだけだ。
*
それは成人式のほとぼりがすっかり覚めた一月後半のこと。二十歳の誕生日をようやく迎えた私を祝う為だと息巻く友人に連れられて、正月ムードの活気を盛大に引きずる京橋へと繰り出した。
大阪城の城北にあるここ京橋は、友人の下宿先であり、私には縁もゆかりも無い土地である。私を祝おうというのに呼びつけるとは如何なもの、と思ったが、友人なりの饗しがあるのかもしれない。私より半年もお酒の経験があるのだから、さぞかし慣れていることだろう、と。
私の予測は当たっていたようで、友人は寡聞な私に、京橋の町の歩き方と酒の飲み方というものをレクチャーしてくれた。それに少し反抗したくなるのは、私の性根がねじ曲がっているからか、いたずら好きのせいだ。
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