06 無魔

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 かまわず舞は進む。玄関ホールへ戻り、奥へ。突き当りのドアを開ける。  入室すると、ソファに(しず)が居た。ライトグリーンのブラウスにデニムパンツ。  出た。やっぱりコイツのせいだ。 「ごめんなさい」いきなり舞は謝った。「大変な事をお願いしなきゃいけない」 「わかってる。妹サンに聞いてるし」  方舟プロジェクトが次の段階に進むのだ。  舞と(しず)。並ぶとよく似ている。だが、同じ目鼻も、表情筋の僅かなバランスの差で、一見別人の顔を作っている。光と影。天使と…… 「アイツ、止まっちまったぞ」親指でドアの外を指し(しず)に言う。「なんで初則を一緒に呼んだんだよ?」 「彼に来てもらったのは、定点になってもらうため」 「は?」 「まあ座んなさいって。順番に話すから」  双子姉妹に向き合って腰を下ろす。窓のカーテン越しに槌似山が見える。  四つのティーカップに、舞はポットから紅茶を分けた。ボクの隣、初則が座るはずの場所にも、湯気の立つカップを一つ置く。  持って来たクッキーと、別に用意されたチョコレートの箱が開かれて、テーブルに並んでいる。  (しず)の唇が、またロクでもないことを言い出すのを待つ。  唇はゆっくり語り始める。 「国道と同じシールドを、この家の周りに展開できるの。家に入ってもらうためにオフにしたけど、さっきオンに戻した。シールド付近では事象が揺らいで、同調できないモブさんたちはフリーズする。だから藤木クンは止まった。で、ここからが仕事――」説明の順序を考えるように間をおく。「花生 透。アタシたちの父親として設定された男は、この世界(ものがたり)の観測者だった。タダちゃんの前任者ね。父が観測することでこの世界は流れていた。逃亡計画という裏切りに記述者は気づいて、父は処刑された。回線の遮断が微妙に間に合わなかったの。即死は免れたけど、もう意識はない。だから──」ボクの目をまっすぐ見つめる。「これから、方舟のインターフェイスを探しに、花生 透の意識の底へ潜航(ダイブ)する」
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