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01 舞
隣のクラスの男子が自殺した。
体育祭が終わり、秋めいた水曜の昼休み。彼は校舎の屋上から飛び降りた。
窓の外を眺めていた女子の目前を、上から下へ瞬時に通過したという。間近で目撃したのは、三階の窓から外を見てお喋りしていた二人の女子。うち一人――ボクの隣に座る――旗野 多恵は、逆さまに落下する男子と一瞬目が合ったそうだ。彼女は翌日から欠席している。ショックで心療内科を受診したらしい。いつも明るい娘なのに……
この件に関する教育委員会への報告で、教師たちは頭を悩ませている。失恋が自殺の動機だと生徒たちは確信しているが、学校側はそのことに触れたがらない。相手女子にかかる心的負担に配慮してのことだ。
夏休み前の失恋から自殺までに三か月。その間隔が、失恋が直接の動機であることを曖昧にはしていた。
不幸な出来事から五日経過した、10月4日──
教室のほぼ中央に座るボクは、斜め左前方、窓際最前の席を見ている。いつも知らないうちに、吸い込まれるように視線がそこへ向く。
視線の先には、薄いブルーのシャツに包まれた丸い肩がある。セミロングの髪が、流れ落ちる漆黒の滝となってその肩に拡がる。黒い艶やかな流れの上に、十月の午後の光が翅を休めている。流れの一筋ひとすじを煌めかせるために。
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