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ボクたちを支える石柱が、呼応するようにオレンジの光を発する。
「きれい……」舞の瞳もオレンジに染まる。
方舟が降りてくる。ボクたちが居る内部シールドを丸ごと呑み込むように。
方舟の中には、ここと同じ空間がありボクと舞が居る。ただしアナログカメラのネガフィルムのように色彩は逆転している。逆位相――ネガのボクたちだ。彼らも同じカタチで抱き合い、鏡写しのようにこちらを見ている。鋳物であるボクらに対する、負記号の鋳型だ。
鋳物が鋳型に嵌め戻る。陽陰相殺。事象のキャンセル。見かけ上の無。無になりすまし、データを鋳型に固定して、無の海を走り抜ける。
方舟の光で祓われるように、空中にへばり付く無魔たちが塵になって崩れる。光に呑まれて消え去る。
記述者は何処に居るのだろう。モヤモヤになって右往左往しているのか。それとも、無魔と一緒に消えたのか。
じきに外部シールドが全解除される。無の津波がすべてを呑み込む。
ふいに、意識が別世界とシンクロした。砂の惑星と──
歓声が上がっている。兵士たちが武器を投げ捨てている。抱き合い、わめき、拳を振り上げる。誰かが持ち出してきたパーティー用のクラッカーが鳴らされる。
基地の中まで抉っていた闇の深淵が、凄い勢いで後退してゆく。後退した跡には黄色い砂の大地が復元する。誤って消去したデータがサルベージされるように。
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