聖母の絞首

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 ポンッとメッセージアプリの通知の音がした。母が家族のグループに送ったものだった。 『家族のみんなへ。  もうすぐ風の時代が来るそうです!世の中も良くも悪くも大きな出来事が多いね。今はなんでも変化してる時期だよ。  でもポジティブな言葉を口にしてれば、ポジティブな方に変化していくからね。みんなで明るく乗り越えていこう!』  私はメッセージにさっと目を通した瞬間、衝動的に指を動かしていた。  母がこういうことを言ってくるのは、初めてではない。私はずっと無視するか、どうでもいいと言っていた。父も関心がないというように流すだけだった。  けれど、今日は相当なハズレ日だ。 『どう考えるかは人の自由だけど、それをこっちに押しつけないで』  勢いのまま送信ボタンを押す。  母は最近、ストレス発散と言ってイヤホンで音楽を聴くようになった。私がネガティブなことを言うと咎めるようになった。独り言や鼻歌が増えた。大丈夫って言ってれば大丈夫、と言うのが口癖になった。  嫌いだった。母のそういう態度やテンションが。どうしようもなく苛立つのだ。父のように冷静に流せない。
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