聖母の絞首

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 たった今送った明らかに悪意のある自分の言葉に、スマホを持つ手が震える。苛立ちが引いていくと同時に、恐ろしさのようなものが込み上げてくる。  私は衝動的に送ったメッセージの送信を取り消す。そのまま画面を閉じたスマホを、ベットの上に思い切り投げつける。  大丈夫、と言うのは、大丈夫じゃないことの裏返しだ。明るく乗り越えようというのは、母の願望だ。全部、母の不安の裏返しだ。  それが分からないほど子どもだとでも思っているのだろうか。まだ私には親が無償の愛を与えるだけの聖人に見えていると思っているのだろうか。  私がどんな気持ちでメッセージを送って、どんな気持ちでそれを取り消したか分からないのだろうか。  嫌いだ。優しくなれない自分が。  あなたが思うほど、私はあなたに無関心じゃない。裏返しの不安は日々の生活のあらゆるところに滲み出ている。それを感じ取れるほどには私も大人になった。  でも、それを気遣って支えられるほど大人でもない。まだ身勝手で反抗心も抱く。  だから、どうしてもあなたの言葉が煩わしい。  本当に私のことを思っているなら、私に何も感じさせないで。
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