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0 あれっ?
ん~朝日が眩しい......。
あれっ?アラームが鳴らない。
「おっかしいなぁ......」
枕元をまさぐってみる。スマホが.....無いっ!
早く探さなきゃ...遅刻なんか出来ないし、部下より早く行って、下準備しなきゃ。
今日はなんてったって大事な日。
必死で頑張ってプラン練り上げて作り上げた血と汗と涙の詰まった企画書を取引先に叩きつけて、契約もぎ取って......約束どおり課長に.....って、あれ?
オカシイ......。
窓の外がルネッサ~ンス!.....ちと古いか。
いや違う違う違う、そうじゃない。ウチのアパートの向かいは昔ながらの八百屋なはず。
「えぇ~っ?」
思わず雄叫ぶ。これは夢だ。夢に違いない。妄想してる暇は無い。早く起きなきゃ。ラッシュになると地下鉄混むんだよな、汗臭いオヤジやら化粧の匂いプンプンの姉ちゃんと引っ付きたくない。
ベッドから飛び起きて、洗面所に走ろうとしたら、自分の尻尾を踏んで転けた。
ーえ、尻尾?ー
ふぁさ~と揺れる茶色の虎縞、チャムそっくりの...。
一年前のあの日を思い出す。愛猫ちゃむが十七年の生涯を閉じた日。大学のキャンパスの隅っこで泣いてた茶トラの子猫。
大家に隠れて十七年連れ添った、いまいち目付きの悪いチャム。
一年前、突然に虹の橋を渡った。あれからずっと眠れなくて、暇になるとイタズラ三昧だったことを思い出して......。
「ちゃむ~!」
思わずベッドに突っ伏して、涙に暮れる。
「にーちゃん、煩いよ」
ふっと眼をやると、やや目付きの悪い猫獣人の少年がドアを開けて立っている。
そう、ここは異世界......。
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