11 正職員に、なりたいんだもん

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11 正職員に、なりたいんだもん

 取り敢えず、無難に日々は過ぎ、今日は採用発表の日。ドキドキ......。  いつもより気合いを入れて、身だしなみ整えて、朝一番でお城で待機。  今回、成人する非正規雇用(アルバイト)は、全部で七人。私の他は武官候補の猪やらドーベルマンやら厳つい獣人さんもいて、色んな獣人さんが並ぶ。みんな新成人。  その中にちょっと大人なカンガルーいやワラビーの獣人がひとり。この方は教育部が希望、つまり先生。頑張ったんだな...スゴい。    王様の前に整列。ひとりひとり名前と部署が発表になる。ワラビーさんは希望どおり教育部。  ドーベルマンさんは警務部、そりゃそうだ。猪さんや熊さんは衛兵部。狸さん、アライグマさんは食糧部。 ......で、私。何故か王様が大きく溜め息をつく。 「あのな.....」  はい、なんでしょう王様。 「真面目で仕事熱心なのはわかるけど、嫁入り希望されてるのだろう?ならば無理に仕事に就かなくてもよくないか?」  えっ?イヤです、就職しますっ。嫁になんか行きませんっ!そんな時代錯誤な発言、止めてください。王様、開明的リベラル派って言われてるじゃないですかっ! 「イヤです。仕事したいんです。お仕事下さい!」  泣いて訴える。頑張ったんだよ~私。認めてよ!  王様再び大きな溜め息。 「タグ、見せてみろ」  タグ......つまり身分証明書、適性とかスキルとか書いてある。前世もスキルアップかなり頑張りました、私。  で、ほわん.....とか浮き上がった文字、 ★適性★  デスクワーク、企画、調査研究、報告書作成、情報伝達、旦那の世話 ★スキル★  洞察力、情報収集・管理、速読、計画管理、人材管理、時間管理、接遇、子守り、寝癖チェック  ほらね、ほらね~って、なんかヘンなもんが混じってますけど、頑張ってるでしょ? 「う~ん......でもなぁ」  頭を抱える王様&侍従長さま。そこでお妃様の鶴の一声。 「ルノアとよく相談してきなさい。なんなら私が直接交渉してあげてもいい」  お、お妃様、分かって下さいますかっ! 「(きさき)、いやイーサン、お前.....」  何か言いたげな王様。 「納得できない状態で結婚しても不幸になるだけです。しっかりした合意形成が必要ですっ!」  負けてないお妃様、ステキ....微妙に方向性違うけど。 シャキンっと出された磨き上げた爪に王様ちょっと、いやかなり押され気味。 「分かった。分かった。けどイツキくん、今、文官の空席が無いんだよね」  なんだ、それを早く言ってよ。ショボン。 「地方のギルド管理の仕事はあるけど、王宮(ほんしゃ)離れるの、イヤだろう?」 「いえ、行きます!」  即断即決。即時対応。正式採用、逃してなるかぃ! 「単身赴任でもなんでもします。採用お願いします」  九十度ぴったりの深礼でお願い。頭なんて下げてナンボよ。そんなことではめげない私。 「分かったけど.....婚約者(ルノア)くんとは、ちゃんと話し合うんだよ。返事はそれからでいいからね」 「はいっ!」  地方(ししゃ)スタートがナンボのもんじゃい。実績上げて成り上がったる。絶対、ルノアになんか言わない。反対なんかさせない。  セントバーナードの内務長官さんが配慮してくれて、赴任先は王都からあまり遠くない、キャネット・シティになった。侍従長さんや内務長官さんと相談して、来月から赴任することにした。  まぁ単身赴任って言ったら、母さんに泣かれたけど、父さんにも呆れられたけど、お仕事したいんだもん。  少し離れたところには、お父さんの実家もある。山猫のお祖父ちゃんはもういないけど、ミーアキャットのお祖母ちゃんは健在。ちょっと安心。  ルンルンしながら支度にいそしむ私なのだ。
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