3 猫は寝子 惰眠は友達

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3 猫は寝子 惰眠は友達

 さすがに日が高くなっているので、その日はお仕事はお休み。午後から遅れて行くのは超恥ずかしいし、ルノアが伝えてくれたように今日は公休日なったらしいので、も一回寝る。有給休暇ならいいんだけど......。  私は猫。猫はよく寝るものなのです。だから「寝子」転じて「ねこ」なのです。漢字の「猫」は鳴き声の「ミャウ」が中国語の「(ミョウ)」と音が似てたからなんですって。ほんまでっか?なトリビア。まぁ、古代は米倉の鼠除けに重宝されたというから、まあ、『苗』と縁の深いケモノではあるわなぁ。ごろごろ.......。  だーっ!ダメだ、落ち着かない。  掃除とかするほど部屋にモノ無いし、洗濯は母さんが完了してる。  前世はお一人様生活長いから、休みの日は家事の日だった。しこたま洗濯をして、缶ビール片手にコンビニ弁当食べながら、シーツが風にはためくのをボーっと見てた。時々、近所の野良がちゃむと遊びにきて.....。 ーそうだ、ちゃむを撫でようー  むくりと起きて、隣の部屋のドアをザ・オープン......いない。階段を勢いよく駆け降りた。 ー昔、これをやって両足捻挫しました。電車には滑り込みセーフだったけど、駅に着いたら歩けなかった。ハズカシイ.....ー 「なぁに、イツキ騒々しい」  母さんが顔をしかめる。 「ちゃむは?」 「ちゃむ兄たん、ガッコれしゅ」  鼠のオモチャで遊んでいたロアがくるっとこっちを向いて笑った。うん、正しい仔猫の遊びだ。 「学校かぁ~」  この世界には学校がある。みんな五~六才になると学校へ行く。いろんな獣人がいて、成長度合いもまちまちなんだけど、王様の方針で読み書きを習う。義務教育だからタダ。教育を受ける権利義務が保障されているところは現代日本なみだ。  基礎教育が終わると後は自由。ちゃむはお祖父ちゃんの後を継ぐって、商いの勉強の出来る学校に行ってる。  私?もとい俺は父さんのように王宮に勤めるために、やっぱり学校に行った。  上級クラスまで行ったところで、あいつ、ルノアに出会って、いきなりー結婚してくれ~!ーとか叫ばれて、無理矢理、花嫁修業コースに突っ込まれそうになったので、辞めた。  私いや、俺は男だっつーの!みんな(オス)しかおらんけど。    まぁ人間の女性だったけど、その時だって花嫁修業なんてゴメンだわ、と思ってたし。せっかく(オス)に生まれたんだもん、広い世界見たいじゃん。出世したいじゃん。......て思ったのに、あのバカ狼。  あれでも貴族の偉いさんの息子だからさぁ~庶民なウチでは否やは言えない。お役人のキャリアとノンキャリの違いみたいなもんよね。あっちには絶対的な権力がある。でも負けない。  すったもんだの末、取り敢えず就職。  ここの成人は十六才。俺、まだ未成年。だから一年、王宮で行儀見習いして成人したら、とかいう話になったけど、俺はそんなに甘くない。しっかり勤めて、文官に採用してもらうんだもん。武官でもいいんだけど、運動神経がね......山猫の割にいまいち。 前世、運動嫌いだったからな.....筋トレなんか絶対無理な人だったしね。 デスクワークが趣味なんす。  あぁっ、仕事したい!  けど、今日は寝る。だって母さんがブラシ片手に、 ーたまにはブラッシングしましょうね~ー て迫るんだもん。私、猫だけどちゃんとお風呂入ってるから。温泉も好きなんだから。 ー髪の毛、毛玉無いから~!ー と叫ぶのをむんずと掴まれて、ブラッシング。ううう......。 ーキレイな髪なんだから.....ー って、山猫父さん譲りのキャラメル色の髪を梳いてもらっているうちに、寝落ちしました、はい。  あぁ、猫って幸せ......。  
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