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7 やっぱり腐ってた...
「久しぶり~社畜ちゃん」
妙に高いテンションに振り向けば、前髪ぱっつん、細目のカワウソ獣人が、木の陰から手を振ってる。なんだこの#既視感__デジャヴュ__#。しかも、社畜って...この世界で初めて聞いたぞ。だいたい会社なんて存在してないのに......こいつ、まさか
ー転生者?ー
ドン引きする私の方にスタスタ歩み寄る、その独特な歩き方.....。
「わたしよ。わ・た・し、忘れたの~?」
「まさか、隣の部屋の腐れ女!?」
「やぁね~、貴腐人て言ってよ」
憶えてる。前世で隣の部屋に住んでた漫画書きの姉ちゃん。BがLする漫画書いてコミケとかで売りまくってたやつ。時々、ベタ塗りとか手伝わされて、いつぞやは休日出勤の私の後ろに隠れて会社に紛れこんで、印刷室で薄い本を印刷しまくってた。
「なんで、あんたがここにいるのよ!?」
「まぁ、そんなにイキらないの。シワになるわよ~。立ち話もなんだし、家来てお茶飲まない?」
返事する間もなく、元腐女子のカワウソ獣人は、ぐいぐい私の腕を引っ張っていく。相変わらず陰キャっぽいずるずるな服だけど、しなやかボディになって前よりは少しマシかも、うん。
で、連れていかれたのは、お城からほど近い、ちょっと裏道に入った一軒家。
「さぁ入って、入って」
玄関から押し込まれた部屋は.....なんか前世のやつの部屋とあんまり変わらない気配。
「んもぅ、すっかり若くなっちゃって~。なかなか気付かなかったわよ」
ティーポットから紅茶っぽいお茶を淹れてくれてニンマリ笑う。その笑いかたも変わらんねぇ。
「前世じゃ私の方が若かったのにさぁ~」
「なんでわかったのよっ!」
紅茶を勢い良く飲み干して...って、あっちち...舌やけどしたわよ。私、猫舌なんだから。
「あらぁ、ちょっと前にお城の門を通りかかったらさぁ、『イツキ~、イツキ~』って狼野郎がデカイ声で呼んでたからさぁ、ひょっと見たら、どっかで見たようなつり目な我が儘っぽい猫がいるじゃない。まさか......とは思ったんだけど、『社畜』って囁いてみたら、モロ反応したから、やっぱり社畜ちゃんだと思ってさ~」
あんのバカ狼!.....それにしても、なんでコイツがこの世界に転生してんの?
「やぁだぁ~社畜ちゃん、私さぁ、事故で死んだじゃない。コミケの帰りに、買ったばかりの二次創作のやつ、つい夢中になって読んでてさぁ~」
思い出した。三十そこそこで事故で死んでたんだわ、この人。
はっ......!
「あんたねぇ.....部屋の片付けに来て、親御さん固まってたわよ。エチエチな本、しこたま溜め込んで...。どうやって捨てようか悩んでたわよ」
そう、仕方なく、こっそり会社持っていってシュレッダー掛けてあげた。私まで腐女子かと思われたわよ、一時。単なる燃えないゴミなのに。
「あ~、あれは思いっきり黒歴史になっちゃたわねぇ。でも隣が社畜ちゃんで良かったわぁ」
良くない。全然、良くない。いや問題はそこじゃない。
「いや、なんであんたの転生先がここなのよ?」
「そりゃあ、神様にリクエストしたから.....人外のエチエチ流行ってたじゃない、前世で」
腐れ沼の流行りなんぞ知らんがな。まぁルンルンしてるとこを見ると満喫してるみたいね~。イケメン獣人多いしね。
「社畜ちゃんは、どうして?...やっぱり事故死?」
違うわ!カワウソ女め。
「会社で倒れたのよ、残業中に」
額をピシャリと自分で叩いて、やつが笑った。
「名誉の戦死?らしすぎてウケるぅ~」
ずずっとお茶をすすってやつは、はあぁと大きな息をついて、やつはマジマジと私の顔を見た。
「しばらく様子を見てたら、相っ変わらず社畜ちゃんしてるみたいね~。まぁ会社じゃなく王宮勤め?あんたも好きよね?少しは懲りなさいよ」
ぐさっ.....。いいじゃん、趣味なのよ、仕事がっ。
「そういうあんたは何やってんのよ?相変わらず漫画書き?#男__ヤロー__#しかいないのに、需要あんの?BL って」
「それがあるのよ~」
訝る私に、ぴらぴら手を振って、やつが言った。
「この世界には、妖精とか精霊とかってのも住んでいてさぁ......この世界じゃそういう種族は性別が無いらしいの。赤ちゃんも木の実とかから出てくるらしくて.....」
ファンタジー通り越して童話の世界かよ。
「だ、か、ら#獣人__にんげん__#のエチエチに興味深々らしくて......もぅ売れっ子なんだからぁ.....あ、あんた今度、結婚するんでしょ。取材させてよ。一途でヤンデレなワンコ攻めと生意気ニャンコ受け、滾るわぁ...」
誰がヤンデレだ?そんなだったら今すぐ縁切るぞ、ルノア!第一、結婚なんかしねーし!
「結婚なんか、しないもん!取材したけりゃ、自分でパートナー作れば?」
「あ~ら、いるわよ。パートナー」
へっ?
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