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おしまい
怖い。
全身がガチガチに凝り固まってしまったようだ。
それでも、ンジャヤは死なない為に必死になった。
敵をしっかり見ること。
無理はしないこと。
大丈夫そうだと思えた時にだけ、攻撃すること。
辛抱すること。
ンジャヤにとってはいつだって、それだけが全てだった。
目の前には大きな、大きな魔物。リュウと呼ぶそうだ。
周りには怪我人、死人もいるかもしれない。
叫び声が、うめきが聞こえる。
正直、今まで経験した全てにおいて、一番酷い状況に思えた。
リュウが口をかっと開いたので、ンジャヤは攻撃が当たらなそうな所まで逃げた。
それからまた、隙を見て攻撃する。逃げる、隠れる、攻撃する。
どのくらいの時間が経ったのだろう。
気づいた時、ンジャヤはドシィン、とリュウが倒れる姿を見ていた。
怖かった。
怖かった。
とても怖かった。
ガタガタと震える体を抱きしめ、ンジャヤはその場にへたり込んだ。
歓声は生き残った兵たちのものだろう。
暗雲が晴れていく。
臭くて臭くてたまらなかった空気に、どこからか花と草の香りが紛れていた。
ンジャヤは二度と戦いたくない、怖かったし感触は気持ち悪かったし、最悪だったと思いながら、ンジャヤの為に用意された、よたよたと帰りの馬車に乗り込んだ。
役人が言う。
「ンジャヤ様には国王様より褒美がもたらされます! 」
役人が言う。
「望めば王族と結婚することもできましょう!」
役人が言う。
「広場に銅像を建てる予定があります!」
ンジャヤは首を振り、ああ大変な目に合った、と与えられた宿まで昼寝をすることにした。
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