第3章 雨音

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 窓の外の景色は流れるように移り変わって行く。       つい先程まで街中を走っていたタクシーは、いつの間にか、山道に差し掛かっていた。  遠くから川のせせらぎが聞こえてくるような、そんな気持ちになる。 「とうもろこし」 「椎茸」 「け、け‥‥け?」 「あるある」 「え?‥‥ないよ?」 後ろでは杏ちゃんと亮太がしりとりをしていた。おそらく、野菜縛りでしているのだろう。  私はちらっと隣の様子を窺う。 新幹線の中でも爆睡していたのに、どうやら、まだ眠いらしい。 英二は、腕を組み、窓に寄りかかって眠っていた。   「もうすぐ着くよ〜」  蘭さんがにっこり笑って、助手席から振り向く。 杏ちゃんと亮太はすぐにしりとりをやめて、荷物をまとめ始めた。この切り替えの良さが、別荘への興奮を抑えられない2人を、容易に想像させる。 「英二、もうすぐ着くってよ」  私は英二の肩を揺らした。英二は一度眠りにつくと、なかなか起きない。朝も、3人のうち誰かが、毎日英二を部屋まで起こしに行く。  私は、いつもしているように英二の鼻をつまんだ。 「‥‥ん」  英二の瞼がゆっくり開く。 ──蘭さんは、英二の寝起きがとんでもなく悪いことを知っているだろか。  一緒に暮らしているのだから、私しか知らない英二の姿だって、もしかしたらあるのかもしれない。 美咲は、敵うはずない相手に、しょうもない張り合いをしていることが少し情けなくなった。   「皆さん到着いたしました。少し坂になってますので、気をつけて降りて下さい」   タクシーのおじいさんは、2世代くらい年下の私たちに、丁寧すぎる口調で話しかける。
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