第3章 雨音

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「そろそろ帰り支度始めようか」  別荘での2日目。夕方に差し掛かった頃、蓮さんの一声でみんないそいそと動き出した。 1日目の疲れからか、2日目は別荘の室内で過ごすことで意見がまとまった。 朝から、亮太が作った絶品のフレンチトーストを食べ、その後6人で人生ゲームをして過ごした。 せっかく軽井沢に来ているのだからアウトドアを楽しもう…とも思ったのだが、たとえ高校生だと言っても、体はそんなに若くないのが現実だった。 別荘での時の流れは、何だか本当に速くて、蓮さんが「帰り支度」と言った時には、もうそんな時間?と聞き返したくなるくらいだった。 「美咲ちゃん、ちょっと」 杏ちゃんと喋りながら、パジャマをキャリーケースに詰めているとき、部屋の入り口から名前を呼ばれた。振り向くと蓮さんが手招きしている。 「蓮さん」 私は駆け寄った。 「どうしたんですか?」 蓮さんを見ると、さっきの人生ゲームで借金まみれになっていた様子を思い出して何だか笑いが込み上げてくる。 「何笑ってんの」 「いや、ちょっと思い出しちゃって」 「ふーん、やっと気許してくれたみたいで良かったけど」 確かに、最初の方の私の態度、冷たかったかな。…にしても、蓮さんはフレンドリーすぎる。 「あのさ、あとちょっとでお別れだし、Lime交換しない?」 「…え?」 「ダメかな? 美咲ちゃんとこれっきりなの嫌なんだけど」 わぁぁストレートすぎて照れるよ。蓮さんは何も意識してないのかもしれないけど、、 「…いいですよ?」 「やった」 私がスマホを取り出してモタモタしていると、蓮さんは慣れた手つきで私と自分のスマホを操作する。 「また連絡するから」 そう言うと足早に階段を降りていった。
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