はじまりはじまり

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 予定では深夜に帰ってくるとの事だが、こうして子供達をナーゼルに預けているところからして、予定はあくまでも予定という訳である。  獅子の氏族長は自分以上に若くして長となりながら務めを果たしているカリムを随分高く買っているようで、気に入っているのだろうと思わせる言動をよくしていた。いつもあれこれと教唆もしてくれるから、その厚意に甘えてカリムもまた氏族を束ねる長として、色々教えを請うているのかもしれない。  氏族ごとに毎年順番で司るは、砂漠に聳え立つ古い神殿での厳かな大祭。年に一度の大きな、厳粛なる神への感謝と敬意を払う。  今年の大祭を任されたのは、ナーゼルも属する狼の氏族。 「まだ若い長を構えた狼では、大祭の風格に耐えられないのでは…」などと砂漠に点在する他の氏族達から懸念されている事を知っているが、前年務めた獅子の氏族長も、ナーゼルの親友よりは年上だが、それでも今年三十になると聞くから充分若い方である。  ちなみに、今の獅子が長の座に君臨したのは確か十一年前だった。  そんな獅子の若長が、昨年無事大祭を務め上げたのだから、自分達、狼の氏族もきっと成功させてみせる。
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