はじまりはじまり

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 油断すればすぐに死んでしまうような環境で生きているから、砂漠に生きる民にとって婚姻は早ければ早い程良いし、女に望むのは若く健康で、早い内から子供を産める頑丈さが備わっていれば尚良い。  カリムが遠い地から攫ってきた、澄みきった美貌を持つ娘はその条件を満たしていたが、それでも十二で孕ませるのは流石にちょっと早いと言うか、男らしいが優しいカリムがそんなに大胆だとは思わなかった。――どんだけ自分のモンにしたかったんだよ。  そんな親友の、今まで知らなかった一面を知って早十年。  未だ彼女一人を妻にして、隙あらば求愛しているような男だから、今日の要件は獅子への挨拶とは言え、普段は氏族の長、子育てとお互い多忙で二人きりの時間など滅多に持てない。もしかしたら今頃、久々の恋人気分を思う存分楽しんでいるのでは。  楽しむだけで済んでいれば良いけれど、愉しんでいたらどうしよう。……否、別にどうもしないけど。  六人目を産んだばかりなのに、もう次の子供を産む羽目になってしまったら、ちょっと彼の妻が気の毒かもしれない。
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