親が推しを購入してきた!?

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親が推しを購入してきた!?

「あー、今日も良かったな~」 やっぱり、何回観てもあの舞台は良い。それに、、 「大千秋楽が当たって、座席も良い席で、推しを近くで感じられたし、今年の運は使い果たしたな~」 私は車の中で心の声を完全に漏らしながら乗っていた。 「いやいや、舞依お嬢様の日頃の行いが実を結んだのだと私は思いますよ」 そう言うのは、私の専属ドライバーをしてくれている藤木さんだ。 「そんな事ないですよ。あれは本当に運なの!あ、でも少しは日頃の行いの成果が発揮されたのかも」 この日の舞台の当選祈願の為に、重たい荷物を持ったおばあちゃんの荷物を持ったり、妊婦さんに電車の座席を譲ったり、、 「また、次の舞台の当選祈願を願ってコツコツ運を貯めますか…!」 「その勢いです。舞依お嬢様」 先程からお嬢様というワードが流れているが、そう、私は本当に生粋のお嬢様なのである。この国にいる人なら誰でも知っている企業の御曹司の一人娘だ。それ故、ありがたい事にお金に困った事はない。でも、何不自由がない生活に対し、私は面白みを感じなくなり、私が父に一人暮らしをしたいというと、心配性な父は渋々一人暮らしを許してくれ、現在私は、財閥が所有するマンションに住んでいる。仕事もいずれは父親の仕事を継ぐ予定なのだが、私がやりたい事を父に話すとすぐに許してくれ、会社の事は気にせずに自分の人生を楽しめと言われた。そのおかげで私は、今の生活を楽しむ事が出来ている。 車がマンションに到着し、藤木さんが車のドアを開けてくれる。 「それでは、また何か御用がありましたら、ご連絡下さい」 「うん。今日はありがとね」 藤木さんに挨拶をし、マンションに入ろうとした時、藤木さんに呼び止められた。 「舞依お嬢様」 「ん?」 「少しお早いですが、24歳のお誕生日おめでとうございます」 そう言うと、藤木さんは小さな花束を私に渡した。 「ありがとう。素敵な花束ね。大切にするわ。」 私が花束を眺めていると 「あ、そういえば、旦那様からの伝言で、明日の私からの電話には出るように。だそうです」 「電話?」 「はい。なんでも、その時の舞依お嬢様のお声が聞きたいそうで」 そう言いながら、藤木さんも少し困惑そうに話をしている。 「了解。とりあえず、お父さんからの電話には出るわ」 「はい。そうして頂けると幸いです」 そう言うと、藤木さんは私をマンションの入り口まで見送ってくれた。 エレベーターに乗り、自分が住んでいる階に着き、自分の部屋に向かい、鍵を開ける。たくさんのグッズが入った荷物を降ろし、直ぐにお風呂場に向かう。 全身がスッキリした後、冷蔵庫に冷えているお酒を取り出し、蓋を開けながら外のベランダに出る。お酒を一口飲んだ後、私はふと空を見上げた。 「あ~、今日で23歳の私ともお別れか~。24歳の私には何が待っているだろう。無事に仕事も続けられて、推し事も出来ているといいな~」 そう言えば、まだ開封してないグッズがあるんだった。今回めちゃくちゃ種類があるランダムブロマイドだから推しが一枚でも当たるといいんだけど。 リビングに戻り、バッグの中からグッズを取り出し、丁寧に開封していく。 「今回は、友達の結婚式が重なって渡すご祝儀が多くて結構な額が飛んで数枚しか買えなかったからな~。友達が結婚するのは嬉しいんだけど、お金が~、って、えっ!推し来た!」 確か、全50種類だったよね。そのうち推しのブロマイドは十種類。 五分の一の運が巡って来た。 「ありがたい…。あー、尊い、可愛い、大好きです」 そんな言葉を連呼しながら、次々とグッズを開封していく。 一通り開封し終えた後、 「今回、どうなるかなと思ったけどいい感じかも!」 欲しいブロマイド全部は揃わなかったけど、お目当てのブロマイドはゲット出来たし、満足だ。やっぱり、自分で稼いだお金で推しが出てきた時は言葉にならないくらい嬉しい。 「あ~なんか幸せ過ぎて眠くなってきた。」 私は、そのまま床に横になり、目を閉じると一日の疲れのせいか、一瞬で眠りについた。
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