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私は強く貼られているガムテープを剥がし、急いで蓋を開けた。
箱の中には、ぐたっとしている男の人が入っていた。
男の人というより、私の推しが入っていた。
「えっ、」
なんで箱の中にいるの?ていうか、この状況はなに?
なんかご丁寧に推しにリボンが掛けられていて、この状況の中、申し訳ないけど、凄くいいです。
あー、ここにカメラがあったら写真を撮りたい。
そんな事を思っていると、彼の目がうっすらと開いた。
「あっ、」
彼は何か言いたげに上目遣いで私を見ている。
あ、リボンの紐が口に引っかかってて喋れないんだ。
あー、本当にこの状況の中、申し訳ないんだけどこの光景をシャッターに収めておきたい。そしてそれをブロマイド化して販売して欲しい。
すると彼は、目を閉じて更にぐったりとし始めた。
「えっ」
よく見ると、顔の血色が悪く、呼吸が荒く額には汗が滲んでいる。
もしかして、何時間も段ボールに詰められていたせいで、酸欠状態になっているのかも…!
「このままじゃまずい…!」
私は急いで彼の周りに掛かっているリボンをほどき、彼を箱から出した。
その後私はどうすればいいのか分からず、とっさに藤木さんに電話をした。
すると、藤木さんはワンコールで出て
「何かありましたか」
「あ、あの藤木さん!目の前に酸欠状態の人がいるんですけど、ど、どうすればいい!」
「落ち着いてください、舞依お嬢様。今から私がいくつか質問を致しますので、その質問に答えて頂けますか」
「わ、分かった!」
その後は、藤木さんの質問に答え、そこから、彼にどのような処置をすればいいのかを適格に教えてくれた。すると段々と彼の血色が良くなり、呼吸も安定してきた。
藤木さんは医師免許を持っていて、幼い頃や時々、私が体調を崩したときに色々と支えてくれた。他にも藤木さんは色々な資格を持っていて本当に頼りになる存在だ。
なんとか全ての処置を終え、ソファーに寝かせたあと、私は改めて彼を見た。
「私の推しが今、私の住む部屋で眠っている…」
ていうか、私はなんでこんなに冷静でいられるんだろう。
舞台を観に行く時や、接触イベントの時は冷静じゃいられなくなるのに。
「綺麗な寝顔…」
あー、可愛い。このブロマイド売ってくれないかな~。
お金なら頑張って働いて出すので。
「何か飲み物を用意しておこう。それと、食事も」
そして、、
「彼が目を覚ましたら、初めに全力で詫びを入れ、色々と事情を聞こう…」
そして、、
「お父さんを問いただそう」
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