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「んっ…」
「あ、目覚ました!あの、体調とか大丈夫ですか?あ、何か飲んだりします?それとも何か食べますか?」
「えっと…」
私が質問し過ぎた所為で、彼は困っていた。
「あ、ごめんなさい!というか私、推しと喋ってる…」
私は、改めて自分の目の前の光景を見た瞬間、気が付くとキッチンまで逃げていた。さっきまでは冷静でいたはずなのに、やっぱり駄目だった…!
さっきまで言っていた全力で詫びを入れようという気持ちはどこにいったんだ!
「あ、あの…!そんなに怖がらないでください!というか、俺の方が急に貴方が現れて色々と怖いんですが…」
「そ、そうですよね!ご、ごめんなさい!全ては私の父の所為なんです!よ、よろしければですが、目の前に飲み物と食事を用意したので良かったら食べて下さい!勿論、毒は入ってないので!」
私は、彼の姿を見る事すら恐れ多く、その場にしゃがんでしまった。
すると彼の「いただきます」と言う声が聞こえた。私は恐る恐る、立ち上がり、ちらっと彼を見ると、そこには私が入れた緑茶を飲んでいる推しがいた。そして、次に私が作ったおにぎりに手を伸ばし口に入れた瞬間、私は思わず両手で口を押えた。
え、推しが私の作ったおにぎりを食べている…!!
そうなっているのは、私の父が原因なんだけど…!
私の頭の中がパニック状態になっている中、彼はおにぎりを食べ終え、両手を合わせ「ごちそうさまでした」と言った。
すると、彼は私の方を見た。その視線に私は耐える事が出来ず、直ぐに顔を手で覆った。少しの沈黙が流れた後、私は覆っている手の指を少し開くとそこには彼の姿がなかった。
「あれっ、」
消えた。あ、そうか。これは夢だったんだ。
よかった~。これが本当なら本当にお父さんにキレてたわ。
そんな事を思っていると、ふいに誰かに肩を叩かれた。
「あの、俺の声聞こえてます?」
横を振り向くとそこにはいつも画面越しで見ている推しの顔が目の前にあった。
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