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遺作
「ねぇ、愛菜。南先輩が死んだよ」
芽衣はそう言って、私に抱き着いた。芽衣のすすり泣く声を聞きながら、やっとこの日が来たかと思った。
私は彼女が死ぬことをずっと前から知っていた。
夢のなかで、私は南先輩と会ったことがある。彼女は学校の屋上、フェンスの先の、落ちてしまいそうなぎりぎりの場所にいた。
そして、私に笑顔を向けて言った。「大丈夫だよね?」って。何が大丈夫なのか分からないけど、私はとりあえず頷いた。すると、彼女はその場所から飛んだ。
背には羽が生えていた。皮膚を剥がすような光が、彼女を照らして、少しずつ砂となって消えていく。
私を置いて行かないで。私は必死に手を伸ばしたがフェンスの向こうにいる彼女には届かない。
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