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夏が来た
つゆりは
全然 普通の女子。
強いて言えば
コミュ力高い系女子。
同級生はもちろん
先輩にも可愛がられてて
そんな彼女が気がついたら
俺のそばにいるようになったのは
いつ頃からだっけ?
「しょーへーせんぱーい!!」
「ん?」
「球技大会、何に出ますか?」
「つゆりは?」
「私、バレーボールです!」
「俺は バスケ」
昇降口を出て運動場へ続く通路で
両手にハードルを持ったその子が
声をかけてきた。
外の空気はカラカラで
空は青空 夏空だ
期末テストも終わって
明日の球技大会を終えれば 夏休み。
「お互いがんばろうな」
そう言って相手を見ると
カノジョは
こちらをじっと見ながら
ショートボブの右側を耳にかけた。
「しょーへー先輩、
負けてはダメですよ?」
と含みを持たせた表情で笑う。
明日から2日間に渡って
行われる球技大会は
各学年揃い踏みのガチ戦
どいつもこいつも
本気で挑むのがうちの学校の校風だ。
「後輩だからって容赦しねえし」
「3年だからってビビりませんし」
「最後の大会はてっぺんとるって
決めてるからな」
「マジですか?」
2人で笑いあい、
話を始めたタイミングで
彼女と同じようにハードルを持った
陸上部の後輩が集まり始める。
「しょうへい先輩! こんにちは!」
「おつかれさまでーす!」
明るく礼儀正しい女子チームの
雰囲気の安定さが
ほほえましい。
相変わらず、可愛い集団だ。
「お前ら、えらいな、がんばれよ!」
「わーい!先輩に褒められた!」
「先輩も
受験勉強がんばってくださいね!」
しょーもない会話なのに
ずっと笑顔が零れる。
「せんぱーーーーい!!」
そうこうしてたら
女子よりかなり低めの
暑苦しい男どもの声も聞こえ始めた。
声の主たちの方を見て
片手をあげた。
「部活がんばれやー!」
「うぃーっす!」
高校生らしい
白の運動着がやけに夏らしくて
じりじりと感じる太陽の光に
首筋から汗が流れた。
もう一度、女子たちのほうを向く。
「熱中症に気をつけてな。」
「はーい!!」
まっすぐこちらを見てくる
後輩が可愛い。
「おつかれさまでーす!」
いつものまにか
この場に追いついた男子と女子が
ワイワイしながら
俺に一礼して
今度は追い抜いて行った。
その集団の中には
ショートボブのあの子もいる。
つい先月まで
その部活の輪の中に
自分もいたはずなのにな。
ワイワイとにぎやかな雰囲気は
もう遠い思い出の感覚だ。
その集団を見送る俺に
今度は 友人たちが声をかけてきた。
「しょうへい、これから塾?」
「おー 駅まで一緒するか?」
「自転車あるぞ」
下校時の騒がしさはいつまでも続く。
あちいな
そう思った時
どこからかセミの鳴き声が聞こえた。
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