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ギルドに駆け込み依頼が貼られた掲示板を見て回る。全く常に多くの紙が貼られ需要が多そうだが、素人に毛が生えた程度で受けられる物は限られている。
加えて少しでも街から離れるなら複数で受ける事を推奨される為、取り分も減りやすい。
(適当な相方を探さねば)
同じC級なら比較的軽装かつ少々貧相な装備なので分かりやすい。それが丁度近くの掲示板を見ている若者らしき人が居た。
『一緒に受けませんか?』
くるりとコチラを見ると、決して若くは無いと分かる。しかし動きは鈍く無さそうで比較的アタリの相手と言える。
『あぁ、この薬草を採るやつか。』
いーよと言って男はサラリと署名して紙を返してくる。何やら汚い文字だが指摘しても仕方無い事は気にしない。
受付へ渡す際に小さく礼を言う辺り悪い男では無いだろう。
『では行きますか。』
『あ、隊商に途中まで乗せてもらおう。』
街道を暫く歩いてから山中に入る予定が、男が顔見知りの商人に頼んで荷馬車の隅に乗せてもらう。
なる程こうして丁寧に暮らせばC級でも何とか中年までやれるのだろう。
『じゃあ登ろうか。』
いい歳して駆け出しが受ける依頼の経験が豊富な男は思ったよりも身軽に斜面を登っていく。
(それにしても安そうな装備だ。)
羽織っているマントは土汚れで黒ずんだり雨で色褪せたり、元の色が分からない程に変色している。
その下から初心者向けで丈夫ながら安価な採取用の直刀が覗いている。
『普段から薬草採りを?』
派手な討伐系をせずに暮らせるだけの稼ぎがあるなら、彼から学べる物は多いだろう。
『最近はたまにかな。採ったやつを加工して傷薬にしたり、それを治療魔法に合わせて配合したり。やり方は図書館でよくよく調べなよ。』
なる程手順は教えてくれる。この人は中々凄い人ではないかと思えてくる。
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