第一話「それぞれの秘密」

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第一話「それぞれの秘密」

西暦大体1500年前後、誤差は100年。 ここは九州、筑後と呼ばれる地域。 福岡県の下の方にありやすのよ。 筑後川、をご存じですか? ええ私ね、一度車で訪れて橋の上から川を見てみたのですがあれは大きいですねぇ。なんといっても幅が広くて…え?紙芝居中に話し掛けるな、集中出来ない?あいすいません、以後気を付けます。 本州は天下統一を目論む武士が血で血を洗い、裏切り、擦り付け、穏やかでない風潮がありました。これがいわゆる下克上。武将が死ぬと、新たな武将が生まれる奇妙な時代でしたよ。 そんな中、筑後は比較的穏やかな盆地でありやした。 しかしいつ本州から名だたる名将が五万の兵士を連れて押し寄せてくるか分からない。 平和ボケする訳にもいかない筑後の武将、蒲池(かまち)家は油断せずに武芸に励んでおりやした。最も尊敬を集めていたのは家長の長男蒲池(かまち)四季(しき)でありやした。 四季は若く背丈は五尺(150cm)ほどの小柄で肩も小さく、腕も足もヒョロヒョロでありやしたが身のこなしが素早くとても賢い武士でありやした。力に頼らず、舞うような戦法はまさに「武芸」らしく四季の修練には数人の見物人がいるのが常でありやした。 男にも女にも人気がある四季は凛々しく真面目で、とても麗しいご尊顔をお持ちでありやした。その肌の白さは暗闇でも輝く美しさであったそうな。その漆黒の眼に見つめられたら大抵の男は降伏し、女は射止められたと、文句の付けようのない美人でありやした。 ちょっ間の抜けたところがますます愛嬌を感じさせるお茶目さんでした。
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