◆夢小説通りにはいかない◆

4/16
前へ
/93ページ
次へ
たくさんの本に目移りしながら奥へと進んでいく。 どうやらここは本のジャンルごとに分けて並べられているが、それ以上の分類には分けられていないようだった。そのため、少し煩雑に感じられた。 (分類番号付けて整理整頓したい……) 職業病だろうか、そんな風に思ってしまう。 次の角を曲がるとき、ちょうど向こう側から歩いてきた人とぶつかりそうになった。 「あ、すみません」 「シャルロット?」 頭を下げる私にかけられる、名前を呼ぶ声。 顔をあげて見ても当然私はそれが誰だかわからない。 「…………どちら様でしょうか?」 「え……?」 そこに立っていたのはベビーフェイスなイケメンで、柔らかな雰囲気を纏っている。そして私を不思議そうな顔で見つめた。 「えっと、ごめんなさい。私頭を打って記憶喪失になってしまったんです。だから何も覚えていなくて」 「記憶喪失?!シャルロット、僕のこと覚えていないの?」 勢いのまま、彼は私の両手を優しく包んだ。 大きくてあたたかい手は、シャルロットの華奢な手を愛しそうに撫でる。 これはもしや……。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

138人が本棚に入れています
本棚に追加