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引っ越しましたっ
「わあ、千紘さん。
一面のコスモス畑ですよ~」
新居の窓を開けた真昼は叫んだ。
引っ越し先は大学近くの新築の借家だった。
窓から一面のコスモス畑が見えて素敵だ。
後ろのカウンター近くで、ダンボールを開けながら千紘が言う。
「家を建ててもいいんだが。
また何処かへ行かされることもあるかもしれないからな。
しばらく、借家でいいか?」
はい、と真昼は振り返ったが、すぐにしんみりと言う。
「また何処かに行っても、家を建てても、どのみち、此処を出ていくわけですよね」
せっかく街に慣れて、門馬たちとも親しくなったのに旅立つことになったときの寂しさを思い出し、真昼は言う。
「あのときも覚悟して行ったはずだったんですけどね~。
やっぱり親しくなった人たちと離れるのは辛いです」
あのメンバーで、ゲームしたり、ドーナツ屋さんでおしゃべりしたり。
そんな日常がもう訪れることはないのだと実感するのは寂しい。
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