3418人が本棚に入れています
本棚に追加
「えーと……邪魔したくないから」
とごまかした。
私は、先輩に疑似交際解消を言われたはずなのに、まだみんなになにも言えずにいた。まず、なんて言ったらいいのかわからない。〝別れた〟と言うのも、〝実は嘘だった〟と言うのも、どちらにしても気が引ける。
それに……先輩との関係の糸を完全に切ってしまうようで、なんとなく嫌だった。あきらめようと誓ったはずなのに、往生際の悪い自分にため息が出る。
「あいつは、金曜日からまた来るよ」
そこへ、藍川先生が割って入ってくる。先生とは連絡を取っているようだ。
「そうなんだ」
ぼそりとそう言うと、北見さんが、
「彼女より藍川先生のほうが知ってるじゃん」
と笑いながらツッコんできた。先生の顔を見ると、同じように笑っている。
「あ! そうだ、荘原さん」
北見さんが先にコートに戻ると、先生に呼び止められた。
振り返ると、
「この前私が言ったこと、まんま自分にブーメランだったわ」
と言われる。
「え?」
「後悔はあとからすべき、って話」
先生は、子どもみたいにピースをした。
最初のコメントを投稿しよう!