3418人が本棚に入れています
本棚に追加
試合に出るまでの流れを話しながら、あぁ、きっといろんなきっかけは、九条先輩がコーチに来てくれてからだったんだな、と思い返す。
先輩がいなければ、マネージャーのままで高校生活を終えていただろう。空気を読むことばかりに気を取られ、自分を守ることに必死で、経験と挑戦という言葉が自分の中に根づかないまま、薄っぺらい大人になっていたかもしれない。
「どうりで、最近の澪佳は食欲があるなぁ、って思ってたのよね」
「ハハ」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「なら、よかった」
お母さんはもう、無理をしないで、とは言わなかった。
ラジオから知っている曲が流れたからか、お母さんは小さく鼻歌を歌いだす。私はまた窓の外へと目を移した。
「……?」
そのとき、ジャージのポケットの中での振動に気が付く。スマホを取り出した私は、そのトーク画面に思わず噴き出した。
そこには、先輩からのスタンプがひとつ。かわいいハリネズミが、吹き出しで〝よく頑張りました〟と言っているイラストだった。
最初のコメントを投稿しよう!