先輩の本当の彼女

3/15
前へ
/225ページ
次へ
 私は、「……はい」と言いつつも、結局、先生は九条先輩から告白されたのか、彼氏さんとはどうなったのかも判断できず、コートに戻ったのだった。  部活後、いつものバス停のベンチに座り、「ふう」と息を吐く。最後の点検や戸締まりは先生がしてくれることになり、私のバスの待ち時間は二十分になっていた。  夏が近くなってきたものの、薄暗い七時のバス停にひとり。私は、時間を持て余し、バッグに忍ばせてきた文庫本を取り出す。けれど、本を読むには光が足りなくて、早々に本を片付け、今度はスマホを取り出した。  開くのは、メッセージアプリの九条先輩とのトーク画面。先輩からのハリネズミのスタンプと、『先輩のおかげです。ありがとうございました』と返した自分の文面。 「音沙汰なし、か」  試合前の土曜日に会ったのだから、たかだか一週間ちょっと会っていないだけ。それなのに、どうしてこんなに時間が経ったように思うのだろう。先輩に関してだけは、いつもそうだ。  それに、あきらめよう吹っ切ろうとしているというのに、頭からなかなか消えてくれない。好きだという気持ちはこんなにも厄介なのかと実感する。 「あー……」
/225ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3418人が本棚に入れています
本棚に追加