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私は、「……はい」と言いつつも、結局、先生は九条先輩から告白されたのか、彼氏さんとはどうなったのかも判断できず、コートに戻ったのだった。
部活後、いつものバス停のベンチに座り、「ふう」と息を吐く。最後の点検や戸締まりは先生がしてくれることになり、私のバスの待ち時間は二十分になっていた。
夏が近くなってきたものの、薄暗い七時のバス停にひとり。私は、時間を持て余し、バッグに忍ばせてきた文庫本を取り出す。けれど、本を読むには光が足りなくて、早々に本を片付け、今度はスマホを取り出した。
開くのは、メッセージアプリの九条先輩とのトーク画面。先輩からのハリネズミのスタンプと、『先輩のおかげです。ありがとうございました』と返した自分の文面。
「音沙汰なし、か」
試合前の土曜日に会ったのだから、たかだか一週間ちょっと会っていないだけ。それなのに、どうしてこんなに時間が経ったように思うのだろう。先輩に関してだけは、いつもそうだ。
それに、あきらめよう吹っ切ろうとしているというのに、頭からなかなか消えてくれない。好きだという気持ちはこんなにも厄介なのかと実感する。
「あー……」
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