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私は、ハリッチを握りしめ、喜びを噛みしめる。
「本当に嬉しいです。ありがとうございました」
ハリッチへ落としていた視線を上げて先輩へ笑顔を向けた私は、こちらを見ていた先輩と、またしっかり目が合った。近くなっていた距離に心拍が跳ねた私は、不自然に姿勢を正し、歩道へと目を戻す。
「さっきの話の続きだけど」
鼻の頭をかいた先輩は、ぽつりと話しはじめた。私は頷いて、それを聞く。
「あんたは政本と交際しだしたと思いこんでたから」
「…………」
「せっかく想いが成就したところに、水を差したくないって思ってた」
先輩はなにを言っているのだろうか。
おずおずと盗み見ると、今度は先輩のほうが前を向いて話していた。屋根についた外灯の光が、横顔の輪郭をきれいに浮き上がらせている。
「でも、気付けば、ここであんたと話したこととか手をつないだこと、リストバンドをもらったこと、総合体育館でがむしゃらにバスケしてるとことか、俺の代わりに泣いてくれたことを思い出して」
「…………」
「あきらめようとしたんだけど、できなくて」
自分の心臓の鼓動が、ちょっとずつ大きく速くなってくる。
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