プロローグ

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プロローグ

「見て見て、何気に手をつないでるじゃん」 「ホントだ。いいなぁ、カレカノ」  部活終わりの夜七時、バス停のベンチに座る私と先輩の前を、ふたりの女子生徒がひそひそ話をしながら通り過ぎていく。 「でも、あの男のほうって、うちの生徒じゃなくない? 制服じゃないし」 「あ、私、知ってる。あの人、うちの高校の卒業生だよ。OBでコーチに来てるんだって。たしか……」  ふたりの後ろ姿を見ると、右の子が人差し指を立てて、もうひとりに説明している。 「バスケ部」  風がふたりの声をさらい、私たちだけになったバス停に、また沈黙が戻ってきた。屋根から(のぞ)く葉桜が、外灯を透かしながら薄闇に揺れている。  私たちは、恋人同士だ。でも、それぞれ違う想い人がいる彼氏と彼女。  肩と肩が触れていても、手と手をつないでいても……これはあくまで疑似交際――。
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