56人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
王立学園に転入してからというもの、なぜか不可解な出来事に巻き込まれることが多い。
例えば、伯爵令嬢に呼び止められたと思っていたら、彼女が自分から階段を落ちていったとか。叫び声を聞きつけてやってきた王子に対して、彼女はありもしないことを平気でのたまう。
「シーラ様に突き飛ばされて……わたくし、ちょっとお話をしていただけですのに」
「なんだと?」
「ですが、わたくしの言い方にも問題がありましたね。ごめんなさい、シーラ様」
レナルドに手を引かれ、ベアトリーチェがよろよろと起き上がる。
婚約者の前だからだろう。さっきまでの高圧的な物言いはなりを潜め、淑女らしく切なげに目元を伏せている。
(突き飛ばすもなにも……自分から落ちたのに、何を言っているの?)
しかし、弁解しようと口を開く前に、ベアトリーチェの射るような視線が向けられる。反射的に口を噤むと、自分を置いてきぼりにして話が進む。
「とにかく、念のため医務室に行こう。歩けるか?」
「足をくじいただけですので、大丈夫ですわ」
「それはいけない。しっかりつかまっていろ」
最初のコメントを投稿しよう!