ヒロインなのに悪役令嬢役にされて困ってます!

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 シーラの悲鳴に似た声の後、ドスンと何かが落ちる音がして、誰かが駆け寄ってくる足音がする。その後はレナルドとベアトリーチェの会話が続き、やがて再生は止まった。  いつの間にか、会場内は静まりかえっていた。楽器の音色も聞こえない。誰もが、この機械に注視している。  レナルドは信じられないというように、うわごとのようにつぶやく。 「これはなんだ……なぜ、ベアトリーチェの声が聞こえる……?」 「録音機でございます。そのときの声や音を記録し、未来に何度でも聞き直せる機械です」 「そなたは……どうしてこんなものを?」 「シーラがベアトリーチェ様におとしめられているのを知ったからです。ですが、私だけの証言では誰も信じてくれないでしょう。ですから、公的な証拠を集めました。ああそうそう、先月にハールストン家から追い出されたメイドはうちが預かっていましてね。おもしろい話をたくさん聞かせてくれましたよ。聞きます?」  フェリオの視線は、レナルドの後ろにいたはずのベアトリーチェに向けられていた。その視線を追ったのだろう。ゆっくりと後退していく婚約者に、レナルドが声をかける。
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