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「ベアトリーチェ? どこへ行く?」
会場中の視線を一身に浴び、耐えきれなくなったのか、ベアトリーチェが扇で口元を隠しながら早口にまくし立てる。
「ほ、ほほ。用事を思い出しましたわ。わたくし、これで失礼いたしますわ!」
脱兎のごとく外に飛び出した令嬢の奇行を前に、誰も呼び止めることができなかった。
呆気にとられる中、一番先に冷静さを取り戻したのはレナルドだった。婚約者が消えた方向から視線を戻し、そっと息をつく。
「フェリオ。……他にも証拠があるということだったが」
「さすがに信じられませんか?」
「……いや、他の証言も把握しておきたい。彼女が本当に、僕の妃にたり得る人物なのか、吟味したい」
「承知しました。近日中にまとめてお送りしますよ」
「頼む」
二人の会話が一段落したのを見届け、シーラはフェリオの袖口を軽く引いた。
「フェリオ……あなた、どうして」
一歩間違えれば、王族から処罰を言い渡されていたかもしれない。
どうしてこんな危ない橋を渡ったのか、視線で問いかける。シーラの考えがわかったのだろう。フェリオは表情を改め、シーラに向き直る。
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