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「俺は自分の不幸をただ泣くだけの女には興味ない。君のような、どんな逆境でも諦めない人のほうが好ましい」
「……え?」
「どうだろう。新天地で、俺の妻になってみる気はない?」
まるで「今日のランチ、一緒にどう?」とでも言われたような気軽さだ。
こんなフレンドリーな求婚文句をシーラは知らない。
(普通、プロポーズって……もっとこう、真摯な想いを相手に伝えるものじゃなかったかしら……)
それとも、自分が憧れるシチュエーションは所詮、夢物語だったのか。乙女の夢が粉々になっていくのを感じ、うなだれそうになっていると、フェリオがにっと笑う。
「君なら、いい女主人になれると思うんだ」
楽しそうに言われ、シーラは口を噤んだ。
(でも、嘘を言っている感じはしないのよね……)
軽々しい口調には違いないけれど、それだけは確かだ。今までの信頼関係を振り返っても、彼は嘘はつかない。いつだって、自分の思いにはまっすぐで、まぶしいくらいだった。
フェリオの言葉を信じることにしたシーラはふと、自分を見てくる青い瞳に試すような色があることに気づく。女の勘が囁いた。
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