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「あなた……まさか……私がどう動くか、試していたの?」
おそるおそる口にした言葉は、彼の求める答えだったようだ。
フェリオは満足げに頷き、シーラとの距離を縮めた。ドレスの裾が触れあう位置に移動し、シーラのクリーム色の長い髪を一房持ち上げ、口づける。
「察しのいい女性は好きだよ。言っておくけど、こう見えて俺は一途なんだ。君のことは転入したときから気にかけていた。俺の言葉じゃ信用ならない?」
色っぽい瞳に見つめられ、ぐぐっと返答に詰まった。
ここで頷けば、まんまと彼の思惑に乗せられたようで、釈然としない。
少しでも時間を稼ごうと視線をさまよわせてみるが、ちくちくと突き刺すような視線が痛い。シーラは言葉にならない苦い思いをため息とともに逃がし、顔を上げた。
「…………私の負けよ。フェリオ、あなたについていくわ」
「即決できる勇気もあって素晴らしいね、君は」
褒められたのだろうか。一応、褒められたということにしておく。
(確かにこの事態は青天の霹靂だけど、フェリオの言葉は信じられる)
そもそも、これまで伯爵令嬢の嫌がらせに耐えられたのは、彼のおかげだ。
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