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落ち込んでいる自分に笑いかけてくれた唯一の同級生。彼とは雑談ばかりだったが、あの時間があったから前を向いていられた。いつの間にか悪者になってしまった自分が、肩の力を抜いて過ごせたのは彼の前だけだった。
(フェリオの笑顔に救われていた。本当は、ずっと前から惹かれていたのかもしれない)
攻略対象だけが恋愛のすべてじゃない。乙女ゲームのヒロインに転生したとわかったときは何の不幸だと思ったが、学園生活は悲しいことばかりではなかった。
だって、彼と出会えたのだから。
フェリオはシーラの手を取って、シャンデリアの光の下ではなく、外の月明かりのもとに連れ出す。三日月が丸みを帯びた夜空には雲一つない。
冷たい空気を吸い込んで、シーラは笑みを浮かべた。
「……フェリオ。これからよろしくね」
自分は乙女ゲームのヒロイン。
だけど、ゲームのように選ばされるのではなく、自分の未来は自分で選ぶ。
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