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それに引き換え、シーラはまっすぐ伸びたクリーム色の髪に、金茶の瞳。両親は愛らしい顔立ちと言ってくれるけれど、学園内でシーラに声をかけてくるのは他国からの留学生ぐらいだ。彼は大商人の息子というだけあって、誰とでもすぐに打ち解け、気さくに話しかけてくる。留学の理由も人脈作りの一環だろう。
困っているのは、ベアトリーチェに恨まれる理由が思いつかないことだ。
(原因がわかれば、手の打ちようもあるけれど……)
現実は四面楚歌。頼れる友人もいない。彼女の目的は一体なんなのか、それだけでもわかれば対処法も考えられるのだが、過去の自分は何をしてしまったのだろう。
***
シーラは桃色のシフォンが重ねられたドレスの裾をつかみながら、憂鬱な気分で会場に向かっていた。
今日は、学園の一年の締めくくりに開催される仮面舞踏会の日だ。場所は王宮の第三ホールを貸し切って執り行われる。生徒は全員参加という理事長からのお達しがなければ、欠席していた。
ダンスのパートナーもいないシーラにとって、舞踏会ほど気が滅入るものはない。
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