ヒロインなのに悪役令嬢役にされて困ってます!

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 会場の入り口に着くと、男女別に仮面が選べるようになっていた。シーラは孔雀の羽がついた仮面を選んだ。  一人きりでホール内に足を踏み入れると、きらめくシャンデリアの光が降り注ぐ。色とりどりのドレスの向こうには宮廷楽団の姿があり、優雅な音楽が奏でられている。華やかな会場をぐるりと見渡すと、豪華なチキンや一口サイズのケーキが目に入った。 (どうせ壁の花になるのなら、食事を堪能するのも悪くはないわよね)  食べ物のあるほうに足を向かわせていると、くすくすと笑う声が聞こえてきた。振り返ると、黄金の仮面に百合の花を飾った淑女と視線がぶつかる。見慣れた緑の髪に、直感でベアトリーチェだと悟る。  彼女は王子だけでなく、数人の男性を従えていた。仮面を被っていても、癖のある髪や背丈、雰囲気は誤魔化せない。右から生徒会長、侯爵令息、子爵令息だろう。最近、彼ら三人はよくベアトリーチェの周りにいたから。 「……私に何か御用でしょうか?」  控えめに反応を窺うと、ベアトリーチェは口の端をつり上げた。 「パートナーもおらず、出席しなければいけないなんて、おかわいそう」 「…………」
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