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わざわざ口に出さなくても、自分がみじめなのはわかっている。はっきり言って、余計なお世話だ。無言で去ろうとすると、彼女の横にいた生徒会長が口を開いた。
「一番いじらしいのは、男爵令嬢の数々の暴言にも耐え抜いたベアトリーチェのほうだ」
「まあ……」
負けじと横にいた侯爵令息の賛辞も続く。
「伯爵令嬢という身分におごらず、謙虚な君が一番美しい」
「常に美しくありたいと思っていますが、そう言っていただけて嬉しいです」
子爵令息は大仰な身振りで、自分だけの花を称えた。
「君を前にして、会場内の花はかすんでしまうだろう」
「そんな……もったいない言葉ですわ」
世辞を言うたびに、こちらに敵意の眼差しを向けてくる紳士もいかがなものだろうか。
シーラはわざとらしく首を傾げた。
「何が仰りたいのですか?」
目を細めると、ベアトリーチェを守るように、四人の紳士が前に出てくる。背の後ろにかばわれた彼女が不安そうに口元に手を当てている。
だが、目の前の光景に別の光景が重なって見え、シーラは瞬く。不意に、視界がにじんで立ちくらみがした。
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